殊能将之「子どもの王様」

子どもの王様 (ミステリーランド) ショウタは母親と二人でカエデが丘団地に住む小学生。同じ団地に住む親友のトモヤも同じく母親と二人暮しで、ひきこもりがちだけど不思議な作り話が得意だ。あるときショウタはトモヤから「子どもの王様」の話を聞く。無精ひげを生やし、だらしない格好をした「王様」。つかまえられた子供は殴られたり蹴られたりひどい目にあうのだという。
 トモヤの空想だとばかり思っていたショウタだが、次の日、子どもの王様そっくりの人物が団地のそばにいるのを見かけた。ショウタはなんの気なしにトモヤにそれを話すのだが、トモヤは異常なほど怯えだしてしまう。その様子を見てショウタは確信する。子どもの王様はほんとうにいた。そして、今度はトモヤをさらいに来たんだ。
 なんとかしなければ……。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」と銘打ったシリーズなのですが、あんまり子供向けでもないような少し陰惨な話。[トモヤ自身は「子どもの王様」の死を望んでいなかったのが救いになっています。わたしはどちらかというと、あんな親なら、子にも死ぬほど憎む権利があると思うので、親子の絆(だよね、たぶん)という美名のもとに憎む権利まで奪われたような気がしたのが正直なところです。]小学生の日常生活を描いた部分は相変わらずの殊能節で充分楽しく読めるんだけど、1900円はちと高いかも。
それにしても怯えるトモヤと、ラスト付近の「子どもの王様」の顔の挿絵はとんでもなく怖くて、わたしが子供だったら絶対にトラウマになりそうです。MAYAMAXX恐るべし。
「子どもの王様」はking of childrenなのかなぁ。